週末に、妻と秩父・小鹿野町、両神山麓のダリア園にドライブを、と思っていたのですが、台風の影響で中止。
会社に出て、シャイン博士の著作を読み返しています。
「人を助けるとはどういうことか(HELPING)~本当の協力関係をつくる7つの原則」
日本では、東日本震災後が起きたころに、ちょうど第2版が出版され、ベストセラーとなった本です。
改めて、「控えめな問いかけ~支援関係を築き、維持するための鍵」(第5章)などを読みますと、
キャリアコンサルタントにとっても、きわめて実践的に役立つ内容が書いてあることがわかります。
「控えめな問いかけ」は、英語だとハンブル・インクアイアリー(humble inquiry)で、これはシャイン先生の
ハンブル(謙虚な、とか控え目なという意味)シリーズの一著作の題名にもなっているわけですが、要は
相手の真のニーズを探りだせる質問のことで、第5章には、その質問の言い回しが、いろいろと出てくるのです。
よく、国家資格キャリアコンサルタントや、2級キャリアコンサルティング技能士の受検対策講座をやっていると
「どんな質問をしたらいいかわからないんです」とか
「実際の質問の文例を教えてください。」といったご発言をされる受講の方がおられます。
そんな方には、ぜひともお薦めしたい本ですね。
例えば、p122に「黙っていてもそれ以上有益な情報を引き出せそうにないなら」、
こんな「純粋な問いかけ」をしてみてはどうですか、ということで出ている11の文例の内の2つ
・「それが最近起きたのはいつですか?」
・「お話いただけた事に関連して、ほかにも何か思い浮かびますか?」
覚えておくと、確かに役立つかもしれませんね。
この本には、こうした質問はだめです、といった例も沢山出てきて、それもとても参考になりますが、
そうした考えのベースになっているのは、
シャイン先生が作られた「プロセス・コンサルテーション」という概念です。
「プロセス・コンサルテーション」とは、
「互いの立場を対等にし(中略)クライアントがよりさまざまな事柄を打ち明けられるような状態を作ること」
と説明されます。(p108-109)
そのための、ハンブル・インクアイアリー(humble inquiry)というわけです。
一見、ロジャーズの言っている事とそう変わらない、と思うキャリアコンサルタントの方も多いのでは、
とも思ってしまうのですが、次の「支援者が陥りやすい六つの罠」(p76~85)
をご覧になると、シャイン先生らしさが出ており、
「プロセス・コンサルティング」の感覚が、ロジャーズとはちょっと違うということが、
少しは感じ取っていただけるでしょうか。(×の後はよくない発言の例:若干手を入れています)
(1)時期尚早に知恵を与える
→クライアントの立場をさらに下に置く事になる
(×よくない発言例)「簡単ですよ。これを実行するだけでいいんです」
(2)防衛的な態度にさらに圧力をかけて対応する
→解決策を提案をして、受け入れられないと「クライアントに理解能力がない」と思う
(×よくない発言例)「渋るのももっともですが、この提案は役立つと思います」
(3)問題を受け入れ、(相手が)依存してくることに過剰反応する
→助けが得られるかどうかもわからないうちにクライアントが依存してしまう
(×よくない発言例)「あなたの問題はわかりました。ご一緒に取り組みましょう」
(4)支援と安心感を与える
→支援や安心感を与えて、クライアントの地位の低さを助長する
(×よくない発言例)「同情するよ。大変だったな」
「きみが納得できる事をしなさい。僕は味方だよ」
「あなたの計画はうまくいくと思いますよ。もしだめでもあなたの責任ではありません」
(5)距離をおいて支援者の役割を果たしたがらない
→客観的であろうとし過ぎて、全く関わりたくないという気持ちを伝えてしまう
(×よくない発言例)「私にはわからないですが・・・次の○○を試してみたらどうでしょう」
(6)ステレオタイプ化、事前の期待、逆転移、投影
→支援者は過去の経験に基づき、以前関わった誰かと似ている、とクライアントを見てしまう
ちなみに、この「プロセス・コンサルテーション」は、単に個人に対してだけでなく、
グループの活性化や、組織の活性化にもつながるキーとなる言葉で、
そうした面にも、本の後半で、話は発展していきます。
さて、先ほど、決まったばかりなのですが、シャイン博士の愛弟子である
尾川丈一先生が、11月19日(日曜)に、シャイン先生の理論について、じきじきに
お話されるセミナーの開催が決まりました。
たぶん、午前中(10~12時)、13~15時、15:30~17:30、という
3セミナーになると思います。
尾川先生は、ロジャーズとシャインの違いを、とても明確に、また楽しく、興味深く語れる
方です。(『キャリアコンサルティング漫談』とでも命名したくなるように)
具体的な内容は、またお知らせ致しますが、よかったら、時間をとっておいて頂ければと存じます。