前に「相談者に指示をするのではなくて、
相談者の気づきを促す質問をしましょう」
という話をしました。(2018.2.19)

その続きです。

質問については、シャイン博士は、
このところ「ハンブル(humble)」な
質問(inquiary)という言い方をされて
本の題名にもしています。(※巻末注)

「ハンブル」とは「謙虚な」という意味。
「謙虚な質問」をしましょう、というのが
シャイン博士が唱えている事です。

謙虚な、とは、
質問の形をとっていても
指示的な質問になるのはよしましょうね、
という意味とも解釈できます。

職業訓練校では、訓練を終えた生徒に、
「なぜ就職活動をしないのですか」と
質問する事がありますが、この場合、
指示的になっている事もあります。

「なぜ、しないのだ?!
ちゃんと活動しなきゃだめだぞ」
という内容を、言っている場合です。

つまり、「就職活動をせよ」という
指示的なメッセージを伝えたい、
わけです。

謙虚な質問は、そうではなくて、
その人の立場にたって、本当に
なぜ就職活動をしていないのか、
を聞いているという場合です。

その人の事をよく知りたい、
というスタンスから、オープンな
「なぜ就職活動をしないのですか」と
いう質問を発している場合です。

文字にすると同じなのですが、
その時の言い方や、身体の姿勢、
また心のスタンスで、指示的な
メッセージになるか、謙虚な質問に
なるかが分かれるのです。

シャイン博士の
『Humble Inquiary』、
その原書の副題が、
「しゃべるのではなく問いかける」
( Asking Instead of Telling)
といった内容
になっているのも象徴的です。

※エドガー・H・シャイン博士は、
現在MIT名誉教授。
キャリアアンカー理論や
キャリアサバイバル理論などで有名。
『Humble Inquiary–The Gentle Art
of Asking Instead of Telling 』
は、日本語では
『問い掛ける技術–確かな人間関係と
優れた組織をつくる』と訳されている。
(金井壽宏監訳、原賀真紀子訳)