前回は、
“意図をもった質問” が「質問力」では重要、
という話をしました。

“意図をもった質問”、をすれば、
それが、相談者の気づきを促すことに
つながるからです。

相談者の気づきを促すという意図を
もった質問ができることが、「質問力」の根幹
とも言えるように思います。

そのような質問を繰り出せるのは、
キャリアコンサルタント側に、
「仮説」(見立て)があることが前提となります。

今回は、この「仮説」(見立て)について
話をします。

3)仮説を立てる(見立てをする)際に
想定してみる4つの項目

前回までの逐語録のなかで、出てきた仮説は、
==========================
相談者は「自分は営業に向かない」と
言っているが、それは、”思いこみ”ではないのか?
==========================
でした。

2級技能士や国家資格キャリアコンサルタントの受検対策
講座では、仮説を考える時は、次の4つをまずは、
想定してみたらどうですか、とよく申し上げます。

【仮説(見立て)を立てる際の想定4項目】

(その1)自己理解の不足
(その2)仕事理解、情報の不足
(その3)周囲とのコミュニケーション不足
(その4)思い込み

これらは、複合している場合もあります。

例えば、営業とはどのような職種なのかという「仕事理解」
が進んでいないために、自分は営業には向いていない、
という「思い込み」が生じている場合などです。

そこには、「自己理解の不足」も関わっているかも
しれません。

このような見立てをする、ことによって、それが当っている
かどうかを検証するために、”意図をもった質問”が
出てくるわけです。

もちろん仮説が、誤っていることもあります。

そうした時には、臨機応変に、また次の仮説に立った
新たな、”意図をもった質問”を繰り出していくことと
なるわけです。


前回の逐語録を、再度見てください。
(CC)の部分だけを抜き出してみます。

(CC12)というと?
(CC13)「そこそこ」というと・・?

(CC14)8割の達成ですね。そうした時は、他の営業の人は
どの位の数字をあげているんですか?
(CC15)そうなんですねぇ。すると○○さんは、営業スタッフ
10人のなかで、必ずしも最下位の成績というわけではない?
(CC16)「この仕事は合わない」とおっしゃられていましたが、
客観的にみれば、御社には○○さん以上に「営業に合わない」人
がいるとも言えるのではないですか?

(CC17)先ほど「口ベタで、営業には向いていない」と言われて
いますが、御社の営業の方は、皆、口ベタではない、ですか?
(CC18)その人の成績はどうなんですか?

CC12~13は、相談者の発言にうなずいて、相談者が語った
言葉を受けて、もっと語って頂こうとしている箇所です。

こうすることで、相談者の方の情報がいろいろわかりますし、
また相談者の方がしゃべりやすい事を気持ちよく語ってもらう事で
人間関係も良好になっていくというわけです。

CC14からは、営業に向かないと言っているが、それは思い込み
かもしれない、という仮説を元とした質問です。

あるいはそんな「仮説の検証」的な大業な言い方をしなくても、
「なぜ、営業に向かない」と思ったのか、を聞いていく質問群と
言えます。

「営業に向かない」と思う理由を、しっかりと聞き出したい、
という思いからの質問群です。

会社のなかでの営業成績が最下位というわけではない、という点
を指摘しています。

そして、前に発言があった、「口ベタ」だから、という発言も
再度取りだしてきて、そこについても、他の口ベタそうに見える
人でも成績をあげている人はいる、という話にもっていっています。

このように、質問をされる事によって、「自分は営業に向かない」
と(漠然と)思っていた事の根拠を、自分でも明確にしていける
ようになってきつつあります。

(CC18)その人の成績はどうなんですか?
(CL19)わりと上位の部類に入っていると思います。
(CC19)それは、○○さんからは、なぜだと見えますか?

以降の展開は、先の「見立ての4項目」にあてはめると、
「(その2)仕事理解、情報の不足」に対応した展開に
なっていきそうです。

【逐語録の例】(前回の掲載分の続き)

(CL20)なぜ、・・・。その理由ですか・・・?
(CC20)あまりしゃべらない、口ベタとも見える人が、
営業成績では、上位に入っている。それはなぜだろう、と
○○さんは思うか、ということです・・・。
(CL21)そうですね。人柄というか、真面目で、誠実な
雰囲気が、他人に安心感を与えるんでしょうかね・・・。
(CC21)真面目で誠実な人柄・・・。
(CL22)そうですね、それが顧客に信頼感を与えて、
その結果が営業成績になっているように思えますねぇ。
(CC22)真面目で誠実な人柄が顧客に安心感や信頼感を
与えている・・・。
(CL23)そうですね。
(CC23)すると、口ベタである、ということは必ずしも
営業に向いていない、ということの理由にはならない、と
いう事になりませんか?
(CL24)ええ、まあ。そうかもしれませんね
(CC24)他に、自分は営業には合わない、向かない、と
思われる理由や根拠はありますか?
(CL25)そうですね。そもそも人と会って話したりする
のが、あまり得意でないんです。
(CC25)人と会って話をするのが得意ではない。
(CL26)そうです。先の先輩は無口かもしれないが、
人と会うのは苦手という事はないんじゃないですかねぇ。
(CC27)どうでしょうね?
(CL27)あまり事務所で長く作業をしているという姿は
見ないですよ。それだけ顧客の所に出かけているようです。
(CC28)そうなんですね。
(CL28)人と会うのは好きだから、じゃないですかね。
(CC29)その無口だけれども成績を上げておられる先輩は、
よく顧客の所に出かけていて、人と会うのが好きそうに見える、
というわけですね。
(CL29)ええ。自分は人と会うこと自体、もちろん話を
することも、はっきり言って嫌いです。

===つづく===

営業は向いていない、と思っているのは、この相談者の
方の思い込みではないか、という仮説から質問を繰り出して
きたのですが、どうでしょう、少しは相談者の方に、
何なりかの「気づき」を得て頂いたでしょうか?

仮説(見立て)は、相談者の発言によって、どんどん
変化していくのが当然です。

上記のような展開になると、また新たな見立てを立てて
いかなくては、という展開を予想させます。

<続きはまた次の回に書いていきます>