「質問力」ということで、書いてきましたが、

理想的な「質問力」とは、相談者の方が自身の課題等に自ら気づき、
それに対して、どうしていこう、と自ら今後の行動の方向性を言っ
てくれるようになることです。

キャリアコンサルタントは、指示的な言い方や命令に近い言い方
をするのではなく、
仮説(見立て=相談者の課題を見立てること)にそって組み立て
られた質問をしていくことによって、

相談者が、自ら気づき、今後の展開(これからこうしていこう)
も語ってくれるようになる、
のが理想なわけです。

しかしながら、そのような理想的なキャリアコンサルティング
(面談)が、いつも起こるとは限りません。

そうならない場合も、実際には多々あります。

次に掲示する逐語録も、そうした例の一つです。

キャリアコンサルタントは、相談者の方の課題として、
「周囲とのコミュニケーションが不足」、「仕事理解が
不足」といった事柄を見立てており、それにそって、
質問を組み立てています。

それが、その人の気づきにつながったらいいのですが、
この面談の中だけでは、そこまでは行かなかったよう
に見えます。

(少しは、気づいて頂いたようにも感じますが・・・)

会社の上司や同僚と今後コミュニケーションをとって
もらい、そこから、何なりかの「気づき」を得てもらえ
れば、という落とし所になっています。

5)面談を客観的に把握し、それなりの
落とし所に持っていく

なぜ、この質問をするのか(したのか)について、もし後に
聞かれたとしたら、その根拠を言えるのが、プロの
キャリアコンサルタントではないか、と思っています。

そうした事につながる話を、今回はしてきたと思っています。

「質問力」とは、いかに適切な質問を投げかけられるか、
ですが、それは私達キャリアコンサルタントにとっては、
相談者に気づきを得て頂ける質問かどうか、という事。

指示、命令や、あるいは解釈や解説にならずに、
相談者が自身で、気づきに至れるような質問。

そうした質問を常に心がけたいものです。

しかしながら、
必ずしも上記のような理想形の面談にならなかったとしても、
私達は面談のなかで「落とし所」を見出す必要があります。

そこに持っていくのが、プロでもあります。

仮に相談者が気づきに至らないように見えても、
決して無理強いをして気づきを強要はできません。

何度か面談を重ねるなかで、解決に至るような課題もある
でしょうし、またある行動をとってもらうように促して、
それが気づきになるようにもできる、かもしれません。

では、最後の回になります。逐語録も最後です。

【逐語録の例】(前回の掲載分の続き)

(CC44)先ほどの、無口にみえるという先輩の話ですが・・、
もしかしたらですが、その先輩も営業を始めた最初の頃は、
営業がいやでいやでしょうがなかったりとか・・・、そんな事
は想像できませんか?
(CL44)そうですね。
(CC45)その先輩が、どんなきっかけで、今のように、営業の
成果をあげられるようになっていったのか、とか・・・を何か
考える事はできないでしょうか?
(CL46)何かきっかけがあった、ということですか?
(CC46)ええ。そのきっかけ等について、何か想像したり、
イメージできるようなことはありませんか?
(CL47)あまり考えた事がありません。聞いてみないとわから
ないですね。
(CC47)もし仮に、その先輩の営業マンの方が、当初は、人
と話すのもイヤだったけれども、何かのきっかけや、あるいは
何らかの理由で、今のように営業を続けているのだとして・・・
そのような事がもし聞けたとしたら、どうですか?
○○さんにとって、何か役に立つことがあると思いますか?
(CL48)ウーーン。そうですね。少しは・・・。
(CC48)少しは役に立つかもしれない・・・。
(CL49)そうですね。
(CC49)どうですか。その先輩、あるいは他の方でもいい
のですが、営業マンの人達に、「最初から営業に向いていた、
と思っていましたか?」といった事を聞いてみる。そうした
ことをされてみられることは・・・。
(CL50)そうですね。
(CC50)同僚や先輩とのコミュニケーションにしても、
それは他人と話すことですから、やはり苦手ですか?
(CL51)うーん。
(CC51)営業というわけではありませんし、普通に周囲の
方々とはお話もされているようですから、あまり改まった形
でなくても、そんなコミュニケーション、というかヒアリング
をしてみたらいかがでしょうか。
(CL52)そうですねぇ。

(CC53)私は、別に○○さんに、営業をこれからも続けて
くださいと思っているわけでもありませんし、何か指示を出そ
うというつもりもないのですが、もう少し周囲の人とのコミュ
ニケーションはあった方がいいかな、と思っています。
○○さんが思っている以上に、周囲の人は、○○さんの事を
評価しているという事もあるかもしれません・・・。
(CL54)そうですかねぇ。
(CC54)今後の決断については、もちろん○○さんご自身が
考え、決める事ですが、その決めるための判断材料を、もう少し
膨らませた方がいいかもしれない、と私は思っています。
(CL55)そうですか。
(CC55)これはあくまでも私見ですが、世の中には
「人と話すのはあまり好きではない。営業は苦手だ」と
思っている人の方が多いのではないでしょうか。
いまおられる会社に、最初から営業が好きだ、という方々だけ
が、たまたま集まった、という事はないと思います。
一人一人、それぞれの考えや、経験があって、営業を続けて
きているようにも思うのですが、それを聞いてみるというのも、
これからどうしていこうかを考える上でのヒントにはなると
思ったんです。○○さんが決めるための、判断材料集めですね。

(CC56)どうですか?
周りの営業マンの人達とのコミュニケーション、
やってみよう、という気持ちになりましたか?
(CL56)そうですね。将来につながるのならば・・・。
(CC57)ぜひ、トライしてみてください。
そして、もしよろしかったら、そのコミュニケーションが
一段落した頃に、もう一度私とお話をしてみませんか。
実際に話してみての感想などをお聞きしたい、と思って
いるのです。
(CL57)はぁ。
(CC58)繰り返しになりますが、○○さんが、営業を続けた
ほうがいいと思っているわけでは、もちろんありません。
どんな情報を集め、どう感じられたのか、を聞く事で、またご
一緒に考えさせて頂ければ、と思っています。
最終判断のためのサポートをさせて頂ければ、と思っています。
わかりました。できるかぎりやってみます。
(CL58)わかりました。また切りのいい所でご連絡します。
(CC59)ありがとうございました。
感想などをお聞きできるのを楽しみにしています。
今日は、どうもありがとうございました。

===了===

世の2級対策講座では、20分の面談時間の後半に、

今までの課題を振り返って、まとめをし、
相談者と、問題を共有化して、その後どうしていくか、
という展開を一緒に考えていくようにしなさい、

といったことが言われる事が多いようです。

今回の「逐語録」を振り返ってみて、
そのような、まとめや問題の共有化を、どのような時点で、
どのようにできたのか、その可能性を探ってみます。

もし、そうしたまとめを入れるとしたら、
(CC53)の辺りでしょうか。

(CC53改)本日、○○さんは、ご自身が営業には向いていない、
営業マンとしての成果もあがっていないので、やめた方がいいかも
しれない、ということで相談に来られました。
お話をお聞きしていくと、口ベタだし、営業向きではない、そも
そも営業は嫌い、といった話がでてきましたが、口ベタな人でも
先輩の中には成果をあげている人もいるし、真面目で誠実な人柄
で顧客に安心感や信頼感を与えれば、という話などもありました。
しかし○○さんは、人と会うのがイヤ、ともお話されております。
それでは営業には向いていないのでは、ということでした。
人と会うのがイヤ、という者が営業などできるのか、という事だ
と思います。しかしもしかしたら、営業を始めた当初は、○○さん
と同じように、そのように思っていた営業マンも周囲にいるのでは
ないか、と申し上げて、○○さんが周りにいる上司や先輩、同僚の
方など、他の営業マンの人達とコミュニケーションをしてみたら、
○○さんの今後を考える上でのヒントが得られるのではないか、
というご提案をさせて頂きました。
もう少し、営業という職種についての、情報を収集してみてから
でも、最終的な決定を下すのはいいのではないか、という話を
させて頂きました。
以上が、この面談での今までの流れ、かと思っていますが、
いかがでしょうか?

このような「まとめ」ができるのは、
自身の面談内容について、客観的に把握できているからこそ、
と思われます。

2級対策ということでは、上記の(CC53改)のように
するのが王道というようにも言えるかもしれませんね。