昨日も記した『若者はなぜ「就職」できなくなったのか?』(児美川孝一郎著)の中では、「正社員モデル中心主義」への批判も大々的に展開されています。

正社員モデル中心主義とは、正社員になる事を中高大の終着点としたようなキャリア教育の在り方、ということです。現実に目を向ければ、決して皆が正社員になれる時代では既にないわけで、さらに正社員の待遇が良いかといえば、決してそうではなく、低賃金、長時間労働、定期昇給やボーナスなし、といったブラック企業的な会社も多いわけですから、キャリア教育がもしも正社員モデルをイメージしているとしたら、それはダメ、というわけです。

キャリア教育では、“正社員にしがみつくのではない働き方”もちゃんとイメージできるような教育を、という提言がされているのです。

 

その点では、職業訓練は、まさに本道のキャリア教育といえそうです。

職業との接続性は極めて高い(職業的レリバンスrelevanceが高い)わけですし、その訓練のなかの「就職支援」系の科目では、正社員を必ずしも薦めているわけではありません。

契約社員やパート、派遣、また個人事業主としての独立といった選択肢まで含めて、多様な働き方を述べ、なかには創業スクールを紹介する場合もあります。

但し、雇用される場合には、雇用保険にだけは少なくとも加入できる企業を選択しよう、といったガイダンスは行っています。

雇用保険は、安い掛け金なのに、もしも何らかの理由で失業、ということになった時には、確実に保証が出る(リスクヘッジになる)からです。

 

こんな事例がありました。

20歳代の若い男性ですが、正社員にこだわり、訓練終了後、結局3か月以内に就職をできなかったという事例です。

その方の場合、両親(とくに母親)の意見が強く、どうしても正社員として就職しなさい、といったプレッシャーがあったようです。

親がそうした気持ちを抱くのはもちろんわかるのですが、何か月も、正社員に固執して働かないよりは、契約社員や派遣、パートなどでも働きだした方が、職業スキルの向上にはつながるし、またキャリアにもなると思えます。

「キャリアは偶然が作る」という考え方もあります。(例えばクランボルツという著名なキャリア学者の説などが有名)

ご縁があった企業には、そこがブラックではないのなら、まずは入ってみる、働きだしてみる、という選択肢も人生にはあっていいのではないでしょか。