“意図をもった質問”を、仮説をもとに質問しましょう、
と申し上げてきましたが、

それが、先入観からの質問となったり、
あるいは、指示・命令のようになってしまっては、
逆効果です。

先入観とは、例えば
「営業が苦手というのは思い込みで、本当は得意な人だ」
と、思ったり、また(だから)
「少し位つらくても営業を続けるべき」などと思う事です。

前者の「本当は営業が得意な人なんだ」というのは、
キャリアコンサルタント(CC)の「思い込み」とも言えます。

後者の「少し位つらくても営業を続けるべき」といった考え
の中には、そのCCの価値観が反映されている事もあります。

「転職はリスクなので、いまの会社はやめない方がいい」、
「石の上にも3年。一度入った所で頑張るべき」といった
価値観などです。

そこから、例えば「いまの会社はやめない方がいい」
という、指示的なCCの発言になってしまってはいけない、
ということです。

キャリアコンサルタントは、あくまでも
相談者の立場にたち、相談者ファーストの姿勢で。、
受容し、共感するわけですから、

私たちCC自身が「思い込み」をしたり、あるいは特定の
価値観で相談者(クライアント=CL)と接しては
いけないわけです。

4)「見立て」は、相談者の発言に応じて、刻々変化。
質問の形で相談者に気づいてもらう。

以下は、逐語録の「つづき」となります。
CC30から、質問の矛先が、少し変化しています。

「見立て」については、思い込み、仕事理解の不足、
といった順番で、仮説をたて、それにそって質問して
きましたが、

CC30では、「コミュニケーションの不足」という
見立ても、出てきており、そこに焦点をあてようと
しています。

仕事理解の不足は、周囲とのコミュニケーション不足
にも原因があるのではないか、といった仮説を、
この時点で、キャリアコンサルタントがした、
ということです。


【逐語録の例】(前回の掲載分の続き)

(CC30)○○さんは、会社の中では、例えば先輩の方や
同僚など周囲の方と、コミュニケーションはされますか?
(CL30)ええ、普通には話しています。
(CC31)普通、というと?
(CL31)朝会えばおはようございます、と挨拶したり
とか、会合の時などにも普通にコミュニケーションします。
(CC32)一緒に飲みに行ったり、はしますか?
(CL32)会社の忘年会や、新入社員歓迎会などの時は、
もちろん一緒してきました。
(CC33)先ほどの先輩の方と、例えば、「人と会いにいく
事を最初は苦手だと思ったりはしませんでしたか」などと
いう事を話したり、といった事はないですか?
(CL33)そうですね。とくにないですね。
(CC34)ちょっと聞いてみたい、なんて事はないですか?
(CL34)え?、何を聞くんですか?
(CC35)その口ベタにも見えるような先輩が、最初から
人と会いにいくのが好きだったのか、といった事です。
(CL36)そうですね・・・。考えてみます。

(CC36)今回、キャリアコンサルタントの所に、今の仕事
を続けるかどうか、ということで来てくださったわけですが、
そうした一種の悩みを、会社の方に相談されたりはしましたか?
(CL37)いいえ、とくにしていないです。
(CC37)これからしてみよう、という気はありますか?
(CL38)うーん、どうですかねぇ。
(CC38)積極的に話しかけてみようとは思わない?
(CL39)そうですね。
(CC39)先ほど、普通に周囲の方々とはコミュニケーション
を取っておられると言われていましたが・・・
(CL40)表面的な会話はしますが、あまり深い話はした事
がないですね。
(CC40)そうなんですね。
あえて、どなたかに会社のなかで相談してみるとしたら、誰か
の顔が思い浮かびますか?
(CL41)これといって思い浮かばないです。
(CC41)上司や同僚、あるいは総務部、といった相談先が
あるのではないかな、などと思いますが・・・
(CL42)とくにイメージできないです。
(CC42)そうなんですねぇ。
会社の方でなくても、ご家族の方とか、学生時代の
友人とか、そうした人で、話をしてみようと思う人はいますか?
(CL43)うーん・・、そちらもすぐには思い浮かばないです。

この相談者は、周囲の方達と、自身の悩み等について、あまり
コミュニケーションをされない人のようです。

できれば、そうした「コミュニケーション不足」あるいは、
それが一因かもしれない「仕事への理解不足」といった点につき、
ご自身で気づいて頂けるようになれば最高です。

そうした気づきを、質問を通じて導き出せれば、
それが「質問力」、あるいは「キラークエスチョン」とも言える
ものです。

この相談者の方は「コミュニケーション不足」や「仕事理解不足」
といったご自身の課題に、自ら気づいて頂けるようには、
なかなか、なっていかないようにも見えますね。