昨年キャリアコンサルティング技能士の1級に合格してからあと、シャイン博士の弟子の尾川丈一先生(アメリカ在住)とかなり話す機会ができ、キャリアコンサルタントの在り方について、かなり考えこんでしまうことがありました。

尾川先生からは「日本のキャリアコンサルタントは本当に必要なのか?本当に世の中の為になっているの?」とたびたび問い掛けられました。

2級にしても1級にしても、まずはロジャーズばりの傾聴がベースであり、それは勿論いいのですが、私達は「臨床心理士」や「心理カウンセラー」ではないのですから、その方のライフキャリアを支援するといっても、やはり職能として問われるのは、「職」を通じての支援なのではないか、そこで私達は本当に「職」を通じての支援を実質的に行えるだけのスキルを持っているのか、という問い掛けでした。

例えば、キャリア支援を行うにあたっては、クライアントの人間関係や、またクライアントが属する組織についての知見や洞察が必要となってきますが、そうした分野(組織やグループのなかでの人間関係、組織の在り方やダイナミクスについて研究する分野=一般には組織心理学や組織社会学と呼ばれる分野)については、あまり勉強してきていない、という事実です。

求職中の方に、職を紹介するにしても、また会社のなかの人間関係に悩んでいる方にアドバイスをするにしても、グループや組織の仕組みやそのダイナミズム、その中での人間関係の在り方などについての知見は必要ではないでしょうか。

 

私達キャリアコンサルタントは、カール・ロジャーズの理論に代表される「対個人」のカウンセリング手法は、よく学んできましたが、「対グループ」や「対組織」、また「人間関係」については、少し勉強が不足しているかもしれません。

私達が学んだ教科書(マンパワーなど)では、あまり扱われていないので、ご存知ない方もおられるかもしれませんが、あの「キャリア・アンカー」理論や「キャリア・ダイナミクス」で著名なエドガー・シャイン博士の先生でもあった人で「社会心理学の父」と呼ばれている、クルト・レヴィンという人がいます。

マサチューセッツ工科大学(MIT)に「グループダイナミクス研究所」を作った人ですが、そのレヴィンの業績が、組織社会学の基盤を作ったといっても過言ではありません。

そのレヴィンが、用い始めた方法で、もっとも有名で、また後世にも多くの影響を与えた手法に「Tグループ」があります。

レヴィンは、人間関係を向上させグループが機能できるようになるには、講義を受けたりするよりも、「いま、ここ」の場で起きている生のグループ体験から得た気づきから学ぶ体験学習のほうがはるかに有効だと考え、Tグループという方法論を生み出した、と言われています。

つまり、Tグループは、体験学習で、人間関係を扱うセッションで、参加者は、そこから他人との関係性について多くの気づきを得るトレーニングということになります。
(もっと具体的な手法については、先入観を与えてしまうことになるので、ぜひ一度は受けてみてください、言わざるをえません)

組織のことを学ぶには、まずは「Tグループを受けろ」と言われているほど、組織社会学の社会心理学の分野では、基礎的なトレーニングと言われているのが、Tグループです。

 

今回、志木サテライトオフィスでは、Tグループを実際に体験してもらえるセミナーを企画しました。名古屋方面では、定期的にTグループをやっておられる所があり、そこでは5泊6日といった形が標準になっているそうですが、今回はわずか1日の体験セッションです。

ミニセミナーというものでしたが、ファシリテーターから「いま、ここで」何を感じていますか、といった問いかけがなされ、人間関係について、普段では得られないような気付きや洞察が得られた(ほんの一端かもしれませんが・・)と思えました。

 

今回のファシリテータとミニレクチャーをお願いした、文川実さまには、たいへん感謝しております。