職業訓練校を受講したきっかけ
私はゲームプログラマー養成科に通いました。当時の年齢は30歳です。
今までプログラマーと無縁の家業である居酒屋で働いていた私がこの訓練校に志望した動機は 、幼い頃からゲームが好きでいつかゲームを作ることが夢だったからです。
訓練についてはハローワークの窓口で知りました。様々な訓練のパンフレットを見せてもらい、 興味を惹いたのがゲームプログラマー養成科でした。
また、訓練期間は給付金の支給を希望できるという事で金銭面でも負担を減らす事ができる点が訓練校受講の後押しにもなっていたと思います。
しかし、ただ漠然としていた夢に経験もなしの状態の私は浮いてしまうのではないか、 そもそもプログラミング講習についていけるのか等、他にも不安はたくさんありました。
けれど何もしなければ何も始まらない。やれるだけやってみようということで、 ゲームプログラマー養成科の紹介に迷いながらも一歩踏み出す事を決意しました。
訓練校に入って1ヶ月目
クラスは男性6の女性3の9人でした。年齢層は20~30半ばくらいまで。
クラスで初めにする事といえば、苦手な人も多いであろう自己紹介。 緊張しやすい私は正直何を話したか覚えていません。
ただ、自分より緊張しているひとや、逆にマイペースすぎて笑いを誘うひと、色んな人がいて緊張がほぐれました。
何より、此処に居るみんな『ゲームが好き』という事で集ってきた仲間だということが、 初対面である私たちの距離を縮めてくれたと思います。
講習については優しそうな講師の方が授業で使用するソフトのインストールから丁寧に教えて下さいました。
わからないところは手を上げて講師の方に質問したり、Slackというゲームプログラマー養成科専用のグループLINEのようなツールを使い、チャットで送ったりなどしていました。
内容としては変数や条件分岐、繰り返し文などを学びました。 新しい事だらけで覚えることもたくさんありましたが、不思議とパズルを解いているような感覚で 難しいけれど楽しいと思う気持ちが湧いていた気がします。
それに、わからなくて当たり前。わからない事を理解し学びに来ているのだからどんどん質問するべき。 という心構えで臨んでいた私は授業前、中、後問わず質問攻めしていましたが、講師の方は面倒臭がらず、真摯に対応して下さいました。中には次の日に跨いで、「昨日言っていた質問だけどこういうのでわかるかな?」と資料を作って下さったりしたので感謝してもしきれません。
訓練校に入って2ヶ月目
クラスの雰囲気にも馴染み、わからない箇所がある場合お互いで教えあったりする場面も増えていました。
講習の合間にハイチュウ食べる?みたいに配ったり、ファイナルファンタジーやMinecraftなどゲームの話題をしているひともいれば、講習で習ったことの復習として自分で問題作ってみたりするひとも。
既に学校の友達感覚で時間を共有していたと思います。
講習はC#の応用に入っていくのですが、課題に対してプログラミングしたものをクラス内でペアになって見せ合う授業をしました。課題が出来なかったひとはペア相手の説明を聞いて理解したり、 逆に教える立場は相手にわかりやすいように説明するにはどうしたらいいか考えることでより深く理解に繋がるなど、互いに研鑽できていたと思います。
また、同じ結果が出るものでもプログラミングのコードに差異があって答えがひとつではない点もこの講習の面白みのひとつだと思います。
内容としては苦手な人が多かった配列やコレクション、メソッドやクラスについて進めていました。
私は講習が終わった後も残って勉強、帰ってからも復習を欠かさずしていました。
勉学に励むなんて、おそらく小学校以来の事だと思います。宿題ですらやらずに放り投げて怒られていたほうがマシと思っていたくらいですから。
そんな私が課題に打ち込めたのは、講師の方の努力やクラスの環境があってこそだと思います。
何故なら課題がゲームに関連する事が多かったからです。
相手の設定した4桁の数字を当てるストライクボールゲームや 十字キーで座標を移動して敵との距離を計算してみようとか 覚えたことが活かせたり、わからなかったことが出来たりするのは快感でした。
三平方の定理なんてすっかり忘れていたのにまさかこんな機会で使う事になるとは 思ってもいませんでしたけど。
訓練校に入って3ヶ月目
C#による個人制作演習がはじまります。
各自ここまで習った事を活かして好きなものを制作しようという事です。
実用的なものがほしいとToDoリストを作る人、バスケットボールが好きだからそれのチームや選手についての情報が出るプログラムを書こうと実践する人、簡易的なじゃんけんゲームを作成する人や、迷路、ピンボールっぽいゲームを作成してみる人もいました。
私はいわゆるランニングゲームを某配管工のドット絵を描いて作成しました。
クラスや継承を使ってコードをまとめたり、ポリモーフィズムを利用してプレイヤーの動き、敵の動きをステージによって異なる様にしてみたり、敵との距離によって追尾してくる敵など、まさに習った事が組み込まれて動きが生まれていました。自分が書いたプログラムがなんでもない一枚の絵を動かしているのがとても嬉しくて、同時にもっと複雑に自由に動かせるようになりたいと意欲にも繋がりました。
限られた時間の中という事で、ステージを3つ作成しましたがエンディングまでは間に合わず 残念ながら完成とまではいきませんでしたが、それなりに遊べるものは作れたと思います。
それでも習ったことがここまで身についていたのだとその時実感する事ができました。
訓練校に入って4ヶ月目
いよいよUnityに講習は移ります。
今までは文字だけで表示されるようなアプリを作るのがメインで進めてきたので、 Unityでグラフィックやオブジェクトが操れる事にクラスはざわついていました。
本格的にゲームエンジンを使用したゲーム作成という段階に入ったのです。
今までになかった3Dによる光の影や前回のランニングゲームでは苦戦していたジャンプや接触判定などの物理演算などの挙動もボタンひとつで処理できるようになり、自分では到底できない摩擦や慣性などの計算などがUnityの機能により実現できるように!
もちろんUnityをいきなり使いこなせる訳ではないので、また覚えなきゃいけない事がたくさんありましたが、まさにゲーム感覚でひとつひとつ積み重ねながら学ぶことができました。
3D玉ころがしや2Dのひよこや猫を使ったゲーム制作も授業の一環にあります。
ここで自分の作りたいゲーム。作れるゲームのイメージがある程度膨らんでくるのではないでしょうか。
訓練校に入って5ヶ月目
この時期になるとUnityの講習も終盤に入り、卒業の事を考え出すひとが増えていました。
私も自分はどんなゲームを作ろう?就職できるのかな?など不安はありました。
けれど今まで苦難を共にした仲間で悩みを共有したり、 授業後の時間に講師の方が相談に乗って下さったり、就職支援の講義や キャリアコンサルタントとの面談など支えてくれる方々がいたので、 失敗を恐れず自分に出来ることを精一杯努めようと考えることができました。
ゲーム制作に関しては勉強の為に1ヶ月で1作品。卒業制作でもう1作品を制作するというものでしたが 残り期間を考え、卒業制作を兼ねて2ヶ月で1作品を制作する事を選択するひとが多くいました。
私も1作品に絞ろうかと迷いましたが、初学という点で他の方よりも経験が浅いので、クオリティよりも少しでも多くのゲームのジャンルに触れてみようと2作品制作に踏み切りました。
作成したゲームは画面上部から落ちてくるおでんを鍋でキャッチして指定された個数に合わせるというもの。
鍋には倍率が設定してあり、おでんに記された数字の数だけ倍率と合わせて増減するので、 即座に計算しつつ、落ちてくるおでんを必要な分だけキャッチするという 反射神経と計算能力が問われるゲームにしてみました。Unityで作成する初の個人制作です。
苦労した点は意外かもしれませんが、プログラミングよりもグラフィックと演出でした。
頭で動く仕組みなどを想像できていても、それを動かす素材自体を作れない。 ゲームとして成り立ってはいても、演出がないと味気無いものになってしまう。
もちろんキャラクターを自作デザインしているひとも中にはいましたが、 デザインという点において未熟な私個人では補えない点があることを理解できました。
しかし、Unityの機能にはそういった点もカバーできる機能があり、パーティクルシステムもその一つだと思います。煙や火花、桜吹雪などの表現がこれひとつでできるようになります。
また、アセットストアなどUnityで使用できる素材を提供しているHPもあるので、3Dのジェット機のモデルやライフル銃を読み込んで動かしてみたりするひともいました。
訓練校に入って6ヶ月目
卒業制作&発表に備えて各々が一生懸命取り組んでいました。
入校当初、分厚いと感じていた教科書も気付けば終わり。
発表に備えて各々が話す事のメモ、動画の編集や自己PRの練習、 ゲームの最終チェックを行うひともいた中で、私は期間ギリギリまで制作していました。
幸い卒業発表会前にはリハーサルもあり、準備に困ることはありませんでしたが 講師の方には心配かけてしまったかと思います。
卒業制作として私は学んだ事を全てゲームに取り入れようと励みました。
アセットストアには元から動くプログラムが組み込まれたものも提供されていますが、 私はそれに頼らず制作してみたいと考えていました。
0から始めた私が出来るようになった事をこのゲームを通して感じてほしいと思ったからです。
前作で自分の苦手な分野も理解していました。デザインに関する事です。
RPGなどを制作するとどうしてもキャラクターやモンスター。街の外観などデザインに関わる事が多くなってきてしまうので、よりシンプルかつ自分で遊んでいて楽しいものを探していました。
その中で見つけた答えが、ガンシューティング。
といってもFPSのような銃のモデルが作成できるわけではないので、照準だけが表示されている ゲームセンターにあるようなものをイメージして制作しました。
内容としては夜空に撃ちあがる花火の種(花火玉)を撃ち抜いて咲かせるというもの。
ここも結構悩んだ所で最初は果物を撃ち抜くとか、案山子を撃ち抜くとか考えていましたが、 もっと派手にしたい…視覚的に楽しいものにしたいという思いの末、花火に行き着きました。
ただ闇雲に乱射するだけではシューティングにならないので連続して当てるとコンボで得点が増加、 撃ち抜いた玉のまわりで誘爆したり、スコアが自己ランキングで保存されたりできるように工夫してみました。
こればかりは個々のデザインのセンスもあるので仕方ない事ではあるのですが、 花火のパーティクルなどもっと凝れたらよかったかなと思う点もあります。
細かい箇所の演出などは、クラスメイトにも相談しました。
文字の重なりだとか見やすい色だとか。独りだとどうしても気付かない点もクラスであるから助け合える。
こうして6か月前はプログラミングのプの字も知らないような自分が、 ひとつのゲームを完成させる事ができました。
この訓練校に通わなければ成し得なかった事です。
もちろん、世間一般でみれば拙い作品ではあるとおもいます。 しかし、確実に自分が夢の世界への第一歩を踏み出した証になったと私は思いました。
これを見て自分もこの世界に踏み入れたいと願うひとの足掛かりになれば幸いです。